【2022年10月更新】当日運営の業務委託範囲確認シート
当日運営を「業」として請け負う制作会社やフリーランスの方から、待遇面や業務内容の拡大への不満をよく耳にします。これは業務範囲がグレーになっている部分があるのに加え、専門的な業務に対する価値の有償化が出来ていないからだと考えます。
これを改善するには、業務委託契約を結ぶ前に、公演の主催者と受託する業務範囲を明確にし、それに見合った業務委託料を合意することが重要です。当日運営と言っても、人によってイメージする業務内容は様々です。それをリストにして、どこまでを業務委託範囲にするかを確認するためのシートを公開します。
このシートは、印刷して業務委託契約書の別紙明細にすることを想定しています。当然ながら、業務委託料、交通費や食事代の有無、支払条件、業務期間・時間などは業務委託契約書の本文で定めます。お互いの齟齬を避けるため、細かい部分までリストアップし、一般的な当日運営の領域を超えていると思われる業務も敢えて網羅しました。対象外の業務はシート上で明示的に除外表示にすることで、主催者との行き違いを防ぐのが狙いです。逆に、専任のカンパニー付き制作者がいる場合は、このシートの全項目を統括することになります。
当日運営の受託は、準委任契約の業務委託です。アルバイトではありませんので、主催者から業務の進め方についての指揮命令は受けません。このため、業務委託者は充分な専門知識があり、受託範囲が確定すれば、あとは上演団体や劇場固有のルールを共有するだけで業務を進められることが前提です。このシートは当日運営を守ることだけが目的ではなく、逆に契約した業務内容に対応出来なければ、主催者から契約解除されることもある、ということを意識して使用してください。
高い専門能力を有した制作会社やフリーランスの方に対し、プロフェッショナルとしてのフィーを支払うことが当日運営の地位向上であって、全体のフィーを底上げすることが本当の解決ではないと考えます。繰り返しますが、業務委託はアルバイトではありません。「業」としての当日運営を確立するのであれば、一人一人がスキルを高め、専門職としての自覚を持ち、価値の有償化を目指すべきだと思います。その一助になるよう、このシートでは大分類「その他」⇒中分類「特殊対応」で、高度なスキルや強い負荷のかかる業務を記載しています。フィーの交渉に活用してください。
【2022年10月更新】新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン準拠版の追加
公益社団法人全国公立文化施設協会「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン改定版」(令和4年9月20日付)*1 の内容に準拠したバージョンを作成しました。水色の行がコロナ対策を反映したもので、コロナ禍が終息するまではこちらを使用してください。主催者との打ち合わせによって、これより厳しい対策を取ることも可能です。今後のガイドライン改定により、対策が緩和される場合もあります。
(ダウンロード用ファイル)
(使用イメージ)
- 打ち合わせ前のイメージ(PDF:649KB)
- 打ち合わせ後のイメージ(PDF:650KB)
- (新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン準拠版)打ち合わせ前のイメージ(PDF:685KB)
- (新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン準拠版)打ち合わせ後のイメージ(PDF:685KB)
打ち合わせ後のイメージは、あくまで一例です。推奨例ではありません。現場によって全く異なると思います。
(使用方法)
- 「大分類」「中分類」「小分類」「受託内容」を確認し、必要に応じて内容を編集してください。「小分類」が不足する場合は、(予備)の行を使用してください。
- 「メニュー」はプルダウンで「基本」「オプション」「要相談」が選択出来ます。基本料金に含まれる場合は「基本」、オプション料金が発生する場合は「オプション」、個別に相談が必要なものは「要相談」を選んでください。
最初に選択されている「基本」「オプション」「要相談」はあくまで参考であり、使用する方が自由に変更してください。全部込みのパック料金や、ポリシーとして絶対に受託しないもの、逆に絶対に受託するものがあっていいと思います。業務委託の範囲を確定し、グレーな領域を残さないことが目的なので、そのために使用してください。
- 「実費請求」はプルダウンで「空欄」「あり」「要相談」が選択出来ます。業務に伴って調達費用などの実費を請求するものは「あり」、個別に相談が必要なものは「要相談」を選んでください。
最初に選択されている「あり」「要相談」はあくまで参考であり、使用する方が自由に変更してください。全部込みのパック料金や、ポリシーとして実費請求が発生するもの、逆に絶対に実費請求が発生しないものがあっていいと思います。業務委託の範囲を確定し、グレーな領域を残さないことが目的なので、そのために使用してください。
- 「備考」は「メニュー」「実費請求」の考え方を入れています。もちろん、これにとらわれる必要はありません。自由に削除・編集してください。
- 4までの準備が出来たら、主催者と打ち合わせます。「受託範囲」はプルダウンで「〇」「×」「△」が選択出来ます。受託するものは「〇」、受託しないか主催者が担当するものは「×」、主催者と共同で担当するものは「△」を選んでください。「×」を選択すると、「小分類」~「備考」がグレーアウトします。「△」を選択すると「受託範囲」が黄色になります。「△」を選択した場合は、当日運営と主催者のどちらが主従かも「備考」に明記しましょう。
- 「受託範囲」が確定したら、「メニュー」の「基本」「オプション」「要相談」に基づいて業務委託料を算出し、主催者と合意します。「実費請求」が発生するものは、予め予算を合意しておきます。
- 合意後、業務委託契約書本文に業務委託料を記載し、当日運営業務委託範囲確認シートは契約書別紙とします。その上で、業務委託契約書に書名捺印または記名捺印します。
(Excelのカスタマイズ方法)
- 「メニュー」「実費請求」「受託範囲」の選択肢は、「データの入力規則」で設定しています。選択肢は非表示にしているシート「選択肢」にありますので、シートを再表示させて編集してください。
- 「メニュー」「実費請求」「受託範囲」を選択した場合のセル・フォントの色は、「条件付き書式」で設定しています。「受託範囲」のルールが最優先で、「×」の場合は「小分類」~「備考」がグレーアウトします。「△」の場合は「受託範囲」が黄色になります。選択肢を編集した場合は、「メニュー」「実費請求」「受託範囲」の「条件付き書式」も編集してください。
- 1~5行目を印刷タイトルに設定しています。
- リンク切れのため、Internet Archive「Wayback Machine」(2022年10月8日保存)へリンク。 [↩]